AGA(男性型脱毛症)の診断は、主に専門医による問診、視診、そして必要に応じていくつかの検査を組み合わせて行われます。まず、問診では、いつ頃から薄毛や抜け毛が気になり始めたか、進行のスピード、家族歴(両親や祖父母の薄毛の状態)、生活習慣(食事、睡眠、喫煙、ストレスなど)、既往歴、現在服用中の薬剤などについて詳しく尋ねられます。これらの情報は、AGAの可能性や進行度合いを判断する上で重要な手がかりとなります。次に、視診です。医師が直接、頭皮や毛髪の状態を観察します。薄毛のパターン(M字型、O字型、U字型など)、毛髪の太さや密度、頭皮の色や炎症の有無などをチェックします。AGAに特徴的な脱毛パターンが見られるかどうかが、診断の大きなポイントとなります。より詳細な情報を得るために、マイクロスコープ(ダーモスコープとも呼ばれる)を用いた頭皮チェックが行われることもあります。これは、頭皮や毛穴の状態、毛髪の太さや本数などを数十倍から数百倍に拡大して観察するもので、肉眼では分かりにくい初期のAGAの兆候や、毛髪のミニチュア化(うぶ毛化)などを確認することができます。さらに、AGAのリスクを遺伝的な側面から調べるために、AGA遺伝子検査が行われることもあります。これは、男性ホルモンレセプターの感受性に関わる遺伝子などを調べるもので、AGAを発症しやすい体質かどうかを判断する参考情報となります。ただし、遺伝子検査の結果がAGAの発症を確定するものではなく、あくまでリスク評価の一つとして用いられます。場合によっては、他の脱毛症との鑑別のために血液検査が行われることもあります。例えば、甲状腺機能異常や貧血などが抜け毛の原因となることがあるため、これらの可能性を排除するために行われます。これらの問診、視診、各種検査の結果を総合的に判断し、医師はAGAの診断を下します。正確な診断を受けることが、適切な治療への第一歩となります。