AGA(男性型脱毛症)は、加齢とともに進行する傾向があるため、高齢になってから薄毛が気になり始め、治療を検討される方もいらっしゃいます。「もう年だから効果がないのでは」と心配されるかもしれませんが、AGA治療に明確な年齢の上限は設けられておらず、高齢者であっても治療を開始することは可能です。実際に、60代や70代でAGA治療を受け、抜け毛の減少や毛髪の改善を実感されている方もいます。ただし、年齢と治療効果の関係については、いくつかの点を理解しておく必要があります。まず、加齢に伴い、毛母細胞の活性そのものが低下している可能性があります。そのため、若い頃に治療を開始した場合と比較すると、治療効果が現れるまでに時間がかかったり、期待するほどの劇的な変化が見られなかったりするケースも考えられます。また、長年にわたってAGAが進行し、毛根が完全に活動を停止してしまっている(線維化している)部位では、薬剤による発毛効果は期待しにくいのが実情です。しかし、まだ活動している毛根が残っていれば、治療によって抜け毛を抑制したり、既存の髪の毛を太く育てたりすることは十分に可能です。高齢者の場合、AGA以外にも健康上の問題を抱えていたり、他の薬剤を服用していたりするケースが多いため、治療薬の選択や副作用のリスク管理にはより慎重な判断が求められます。特に内服薬であるフィナステリドやデュタステリドは、肝臓で代謝されるため、肝機能が低下している場合は注意が必要です。また、他の薬剤との相互作用についても医師に確認する必要があります。ミノキシジル外用薬は、内服薬に比べて全身への影響は少ないとされていますが、心臓や血圧に問題がある場合は、やはり医師との相談が不可欠です。年齢を理由に諦めるのではなく、まずは専門医に相談し、自身の健康状態やAGAの進行度合いを正確に把握した上で、リスクとベネフィットを十分に理解し、納得のいく治療法を選択することが大切です。