AGAが進行しすぎると治療は難しい?

AGA(男性型脱毛症)は、何もしなければ徐々に進行していく脱毛症です。進行が進み、薄毛が広範囲に及んでしまうと、治療による改善が難しくなるのは事実です。その主な理由は、毛髪を作り出す「毛包」の状態にあります。AGAが進行すると、毛包は徐々に小さくなり(ミニチュア化)、髪の毛は細く短くなっていきます。さらに進行が進むと、毛包は最終的に活動を停止し、線維組織に置き換わってしまうことがあります。この線維化が起こってしまった毛包からは、残念ながら薬剤による治療で再び髪の毛を生やすことは極めて困難です。つまり、毛髪を作り出す「種」がなくなってしまった状態と言えるでしょう。そのため、AGA治療の効果を最大限に引き出すためには、毛包がまだ活動している、あるいは活動を再開できる可能性が残っている早い段階で治療を開始することが非常に重要になります。進行が進み、頭皮がツルツルに見えるような状態でも、マイクロスコープなどで詳細に観察すると、まだ細い産毛が残っていたり、毛穴が確認できたりする場合があります。このような場合は、治療によってこれらの産毛が太く成長したり、休止期にある毛根が再び活動を開始したりする可能性が残されています。しかし、長期間にわたってAGAが進行し、毛包の線維化が進んでしまっている場合は、フィナステリドやミノキシジルといった薬剤による治療効果は限定的にならざるを得ません。このようなケースでは、植毛手術がより現実的な選択肢となることもあります。植毛は、後頭部などAGAの影響を受けにくい部位から自身の毛包を採取し、薄毛の気になる部分に移植する治療法です。進行しすぎたAGAに対する治療は、確かに難易度が上がりますが、「全く何もできない」わけではありません。まずは専門医に相談し、現在の毛髪と頭皮の状態を正確に診断してもらい、現実的な治療目標と方法について話し合うことが大切です。