私が自分の頭頂部の異変に気づいたのは、ある日のエレベーターの中でした。鏡に映った自分の頭上が、以前よりも明らかに白く、地肌が透けて見えたのです。その時の衝撃は今でも忘れられません。まだ三十代後半、まさか自分がはげに悩むことになるとは夢にも思っていませんでした。それからは、人の視線が常に自分の頭に向けられているような気がして、エスカレーターの下りに乗るのが怖くなり、帽子が手放せなくなりました。美容室に行くのさえ恥ずかしく、市販の育毛剤を隠れるように買っては試す日々が続きました。焦りからか、インターネットで検索しては様々な情報に振り回されました。高級なシャンプーに変えたり、怪しげなサプリメントを飲んだりしましたが、一向に改善の兆しは見えません。むしろストレスで抜け毛が増えたようにさえ感じました。転機となったのは、勇気を出して専門のクリニックを受診したことです。そこで医師から告げられたのは、びまん性脱毛症という診断と、生活習慣の乱れによるホルモンバランスの崩れが大きな要因であるということでした。仕事の忙しさを理由に睡眠時間を削り、コンビニ弁当ばかり食べていた当時の私の生活は、髪にとって最悪の環境だったのです。治療は内服薬と外用薬の併用、そして何より生活改善から始まりました。まずは睡眠時間を確保し、自炊を心がけました。また、医師のアドバイス通り、頭皮への過剰なケアをやめ、優しく洗うことに徹しました。最初の三ヶ月は効果が実感できず、挫折しそうになりましたが、半年が過ぎた頃、ふと鏡を見ると、生え際に短い産毛のようなものが生えてきているのに気づきました。それは本当に小さな変化でしたが、私にとっては大きな希望の光でした。それからはマッサージも習慣化し、少しずつですが確実に、髪にコシが戻ってくるのを感じました。一年が経つ頃には、以前のようにエレベーターの鏡を直視できるようになりました。もちろん、二十代の頃のようなボリュームには戻っていませんが、地肌の透け感は気にならない程度まで回復しました。この経験を通じて学んだのは、薄毛は恥ずかしいことではなく、体からのSOSサインだということです。一人で抱え込んで悩むよりも、専門家の助けを借り、自分の体と向き合うこと。それが遠回りのようでいて、実は一番の近道でした。
頭頂部の薄毛を克服するまでの道のり