薄毛対策というと、どうしても頭皮に何をつけるか、どう洗うかという外側からのケアに注目が集まりがちです。しかし、髪の毛はあなたの体が作り出す細胞の一部であり、体内のコンディションがそのまま反映される鏡のような存在です。中でも「睡眠」は、髪の成長にとって食事と同じくらい、あるいはそれ以上に重要な要素です。慢性的な睡眠不足や質の悪い睡眠は、どれほど高価な育毛剤の効果も打ち消してしまうほどの破壊力を持っています。髪の毛が最も活発に成長し、ダメージの修復が行われるのは、睡眠中です。この時に鍵となるのが「成長ホルモン」です。成長ホルモンは、毛母細胞の分裂を促し、タンパク質の合成を高める働きがあります。以前は「ゴールデンタイム」として午後十時から午前二時の間に寝るべきと言われていましたが、最新の研究では、時間帯そのものよりも「入眠直後の三時間にどれだけ深い眠り(ノンレム睡眠)につけるか」が重要であることが分かっています。つまり、短時間であっても深く質の高い睡眠をとることができれば、成長ホルモンは十分に分泌されるのです。逆に、睡眠不足が続くと自律神経のバランスが崩れ、交感神経が優位な状態が続きます。交感神経が緊張すると血管が収縮し、末梢血管である頭皮への血流が悪化します。栄養が届かなくなった毛根は活動を停止し、ヘアサイクルが乱れて抜け毛が増加します。また、ストレスホルモンが増加することも薄毛のリスクを高めます。忙しいビジネスマンにとって十分な睡眠時間を確保することは難しいかもしれませんが、就寝前の一時間はスマホを見ない、湯船に浸かって深部体温を上げるなど、睡眠の質を高める工夫は今日からでもできるはずです。さらに、寝具、特に枕の選び方も頭皮ケアの一環と言えます。高さの合わない枕は首の筋肉を緊張させ、頭部への血流を阻害します。また、枕カバーをこまめに洗濯しないと、雑菌が繁殖して頭皮ニキビや炎症の原因となります。顔の肌荒れを気にして枕カバーを変える人は多いですが、頭皮のためにも清潔な寝具環境を整えることは必須です。睡眠という毎日のリセットタイムを最大限に活用し、内側から髪を育てる力を養うこと。それが、遠回りのようでいて最も確実な薄毛対策となるのです。