漢方の世界では、薄毛の原因を一つのパターンで捉えることはありません。人それぞれ体質が違うように、薄毛に至る体の内部環境も異なります。自分の体が今どのような状態にあるのかを知ることが、改善への第一歩となります。代表的な体質のタイプをいくつか見てみましょう。まず「血虚(けっきょ)」タイプです。これは体内の「血(けつ)」が不足している状態で、髪に栄養を十分に届けられなくなります。顔色が悪く、めまいや立ちくらみがしやすく、爪がもろいといった特徴があります。特に女性の薄毛に多いタイプです。次に「腎虚(じんきょ)」タイプ。漢方でいう「腎」は生命エネルギーの貯蔵庫であり、成長や発育、老化を司ります。この腎の働きが衰えると、足腰のだるさや耳鳴り、白髪といった老化サインと共に、髪が抜けやすくなります。加齢による薄毛の多くがこのタイプに関連します。そして「瘀血(おけつ)」タイプ。これは血の流れが滞っている状態で、ドロドロ血とも言えます。肩こりや頭痛がひどく、肌にくすみやシミが出やすい人はこの可能性が。頭皮の血行も悪くなるため、毛根が栄養不足に陥り、薄毛につながります。また、ストレスが原因で「気」の流れが滞る「気滞(きたい)」タイプも注意が必要です。イライラしやすかったり、お腹が張ったりする人は、ストレスが自律神経を乱し、頭皮の血管を収縮させて血行不良を引き起こしているかもしれません。これらのタイプは単独で現れることもあれば、複数が絡み合っていることもあります。例えば、ストレスで気の巡りが悪くなり(気滞)、結果として血の流れも滞る(瘀血)という具合です。自分の体調や生活習慣を振り返り、どのタイプに近いか考えてみることは、専門家に相談する際にも役立ちます。