薄毛の悩みに漢方が良いと聞くと、すぐにでも薬局やインターネットで関連商品を探したくなるかもしれません。しかし、漢方を用いた薄毛改善で最も重要なのは、自己判断で薬を選ばないことです。漢方の世界では「同病異治」という言葉があり、同じ薄毛という症状でも、その原因となる体質は人それぞれ異なるため、治療法も変わってくるという意味です。例えば、血行不良で頭皮に栄養が届かない「瘀血(おけつ)」タイプの人と、加齢や疲労で生命エネルギーが消耗している「腎虚(じんきょ)」タイプの人では、用いるべき漢方薬は全く異なります。もし、自分の体質に合わない漢方薬を服用してしまうと、効果がないばかりか、かえって体の不調を招く可能性すらあります。では、どうすれば自分に合った漢方薬を見つけられるのでしょうか。その答えは、漢方の専門家に相談することです。漢方を処方できる医師のいる皮膚科や内科、あるいは経験豊富な薬剤師や登録販売者がいる漢方薬局を訪ねましょう。専門家は、「望・聞・問・切」という四つの診断方法(四診)を用いて、あなたの体質を総合的に判断します。顔色や舌の状態を見(望診)、声の調子や体臭を聞き(聞診)、生活習慣や自覚症状を詳しく質問し(問診)、脈やお腹の状態に触れて(切診)、あなたの体のどこに不調和が生じているのか、その根本原因を探り出します。この丁寧なカウンセリングを経て、初めてあなただけのオーダーメイドの処方が決まるのです。時間や手間はかかるかもしれませんが、このプロセスこそが、漢方治療の神髄であり、根本的な改善への最短ルートと言えるでしょう。